『迷惑な進化』 シャロンモアレムSharon Moalem, ジョナサンプリンス Jonathan Prince(著)矢野真千子(訳)★★★★★

迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

これはいい本だ。訳が軽薄と感じる人もいるかもしれないが、原文の雰囲気もそうらしいし(訳者のあとがきより)、俺としては堅苦しくなくて読みやすくてわかりやすくてよかった。
わかりやすかったけど、あんまり覚えていない。まえのほうで書いてあった(はずの)ことに言及されても、{え?それなんだっけ…}と思って、該当箇所をさがしまくるということが何回かあった。似たような本をもう少し読まないと定着しないだろう。この本にかぎったことではなく、おなじ本を2回以上読む気にはなれない。
とにかく、自分たちが高校生のころ(生物学的なことを勉強したのはそのころまで)に習ったことから、ずいぶん進んでて、読んでしばらくするとついつい認識が高校時代のレベルにもどっちゃうんだな、どうも。〈レトロウィルス〉なんてのはフレディ・マーキュリーが死んだころやたらと聞いてすんごくなじみのある言葉だったんだけど、RNAを持ったウィルスで逆転写酵素を使ってDNAを改変するということは知らなかった。俺達のころはDNA→RNA→タンパク質という流れしかなかったもんな。
でもって、[異次元の刻印(グラハム・ハンコック 著) ★★★☆☆ - 主夫の生活]の最後のほうで書いた“32億あるDNAの塩基対のうち、遺伝子として使われていない97%の部分”つまり〈ジャンクDNA〉あるいは〈非コードDNA〉はどうも過去に入り込んだウィルスのなごりで、それらはまったく“使われていない”わけではなく、いまもときどきレトロウィルス的なはたらきでわれわれの生命活動に関与することがあるのではないか、ということらしい。
それにしてもT4ファージとかT2ファージとかの格好はすばらしい。高校のとき教科書で見て感動したもんな。
東工大丹治研(ファージ)より
とても自然界のものとは思えない。
長年の懸案である《どうして生命が存在しているのか》、または《〜発生したのか》、または《〜発生するのか》という疑問に対する解答が、すこし見えかけたような気がしたのだが、どうも気のせいだったようだ。