無生物と生物のあいだ

無生物と生物という二元論的デジタル思考がいかんのかもしれんな。たぶん無生物から生物までは連続していて、ウィルスのようにどっちかわからんやつもいる。きっとほかにも途中のやつはおるのだろう。そうであれば、ミミズだってオケラだって植物だって人間だって、石っころとたいしたちがいはない。
となれば、生命に尊さなんてない。逆に言えば石っころでも尊いということになる。そもそも尊さなんて人間の考えたことだから、そんなもん、はなっからないにきまっとるのだ。
今年は俺が生まれて初めてセミを殺虫剤で殺した年だ。
俺たちの子どものころは、クマゼミなんか捕まえようものなら、そりゃもうスーパーヒーローだったのに、最近は、特に夏のはじめは、ほとんどクマゼミ。おととしぐらいからふえはじめた、って感じかな。ちかくの天満社の山をけずって名二環と国道302号線をつくったのも影響しとるのかなあ。
それにむかしは、高いところにしかいなかったのに、いまは手のとどく高さで鳴きまくっている。わが家は庭にでっかいクスノキがあって、裏もオカメヅタの壁になっているので、やかましくてたまらんのだ。子どもたちは散水ノズルのストレート噴射で撃ち落とすのを日課としていた。
それが、たまに、網戸にとまって鳴きやがるのだ。ということは、腹にある音を発生する部分が部屋に向いているということだ。たまらんよ。
というわけで、そういうやつは殺虫剤でシューだ。
そうすると、子どもたちが
「ひどい」
と言う。
「おまえらだって水かけとるじゃないか」
と言うと、
「水と殺虫剤はちがう」
だけど、蚊はどうなんだ。小さければ殺してもいいのか。除菌とか抗菌とかいうのはどうだ。目に見えなきゃいいのか?ゴキブリはどうだ?気持ち悪けりゃいいのか?だったら、うるさいってことだって、じゅうぶん殺す理由になるのではないか。
セミは7日しかいきれないからかわいそう、というやつがいるが、それじゃあシーシェパードと同じだろう。だいたい、地上に出てからはそのくらいかもしれんが、地面の下で7年も生きとるんじゃないのか?そんな長生きする昆虫知らんぞ。
しかし、セミもゴキブリと同じあつかいになっちまうとはなあ。