『街道をゆく 5』司馬遼太郎(著)★★★★★
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/09/05
- メディア: 文庫
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おもしろかった。文章のリズムがいいね。言葉づかいに格があるのにわかりやすい。あることを説明するのに、随分まわり道をするんだけど、そのまわり道がおもしろくて、もちろんちゃんと元にもどってくる。その、「もどったもどった」感もいい。たまたま、モンゴル行きの巻だったんだけど、著者は大学の蒙古語学部出身でありモンゴル行きは著者の長年の夢であり、おれにとってもほとんどまるで未知の領域であり人類史的にまた言語的にまた政治的に興味アリアリのところだったので、余計におもしろかったのだと思う。同行した須田画伯の行状もおもしろい。おもしろくていろんな発見があってよかった。
寒いのが苦手なおれは、むかしから寒いところに住んでいる人に対し「どうしてあんな寒いところに住みつく気になったんだろう?」と疑問に思っていた。でも、わざわざ寒いところに移住したんじゃなくて、移住したところが移住したあとで寒くなっちゃったんじゃないか、ということに今さらながら気がついたのであった。
モンゴル人民共和国の憲法に書いてあるそうだ。まったくもってそのとおりである。
「それでも、3日ですぜ」(201ページ)
駐モンゴル日本大使(正確には代理大使。大使館がひとつきまえに開設されたばかりゆえ、と思う)の崎山氏は蝶の標本をたくさんつくっているのだが、まだ名前が書きしるされていない。科学アカデミーにいってきけばすぐにわかるそうだが、過酷な冬の娯楽として残してあるのだという。しかし、冬は長いのに、その作業とてせいぜい3日しかかからない。
昼風呂に浸って手足を伸ばすような気分でのアナーキーな衝動というのをのべつ感じていて、…(220ページ)
著者自身のことだが、この比喩がいまいちよくわからない。この本で唯一よくわからない箇所。
「そんなアカジ、ちっぽけなじゃないですか、人類が戦争したりすることを思えば―」(283ページ)
ウランバートルの現地ガイド(貿易省の役人)のツェベックマさんのせりふ。ゴビ宿泊の際、著者一行の少人数のために大勢の現地スタッフが随行したことについて、これでは赤字ですね、と著者が言ったことに対し。