「拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる」関岡英之 著 ★★★★★

拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)

拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)

43ページめで読む気の90%をうしなった*1俺は、しばらく読まずに放置していたのだが、残りの10%をふりしぼって(というかやっぱり気になって)、読みはじめてみたらまん中へんからおもしろくなってきた。
この本を読んで、アメリカは鉄のようなものだと思った。鉄は磁石にくっつくが、多くの金属の中で磁石にくっつくのは、鉄とニッケルとコバルトだけだ(と思う)。ところが鉄はほかの金属にくらべて圧倒的に量が多い。だから、磁石にくっつくという性質は、めずらしいのにとてもありふれているというわけのわからないことになってしまう。
187ページに

英米法とて、アングロ・サクソン民族の固有の文化と独特の思考パターンに色濃く染めあげられており、イギリス本国とかつてのその植民地だったアメリカやオセアニアなど特定の地域だけに見られるローカル色豊かなものに過ぎない。にもかかわらず、なぜアメリカ人は、自らの価値観の普遍性を自明のことだと信じて疑わないのだろうか。

とある。
その答がそのあと書かれているのかと読んでいくと、なかなか出てこない。アングロ・サクソン民族の文化の特殊性がくわしく説明されているばかりで、187ページの問いかけに対しての答は、ようやく218ページで出てくる。

その大きな理由のひとつとして、社会主義の崩壊現象が「自分たちの正しさが証明された」とアメリカ人に自信を抱かせたことが挙げられている。

とは書かれているが、そのあと、

だが冷戦期間中は同じ資本主義陣営に属して一枚岩だと思われていた日本やヨーロッパ大陸の、しかもその中枢から、アメリカとは異なる価値観が主張されるようになったのは、むしろ社会主義崩壊後のことである。

と、その反論めいたことが書かれていて、それでこの本は終わってしまう。
もっとも、この疑問がこの本の主たるテーマではないと思われるので、それはそれでいいのだが。
が、俺が思うに、自明のこととして触れられなかったのかもしれないが、アメリカ人が自分たちの文化を普遍的なものだと思うのは、
イギリスというさいはての島国で、大陸とは異なる特殊な文化をはぐくんできた人たちが、北アメリカやオセアニアに移住し、比較的気候がよく面積の広い北アメリカ南部(つまりアメリカ合衆国)で特に数が増えた。彼らの文化もかの地で広まり、特殊なのにありふれているということになってしまった。まわりを見てもみんなそうだから、それが特殊だということに気がつかない。それが普通だと思ってしまう。
ということだろうか。
まあ、とにかく、気の毒な話である。皆さん、彼らのために祈りましょう。
というのはもちろん冗談で、祈ったからといって何かが変わるとはとても思えない。それよりもほめてやることが大切だろうね。
それはさておき、なかなかいい本でした。売れ切れてたり、中古がべらぼうに高値だったのはそのせいじゃないかな。はじめのほうにおかしなところはあったけど、それをさっぴいても5つです。