「震える山」C.J.ボックス(著)野口百合子(訳)★★★★★

震える山 (講談社文庫)

震える山 (講談社文庫)

ずいぶん間があいた。それには2つの理由がある。
ひとつは、6月から自動車図書館[だけ]を利用しているからだ(歩いて3分ぐらいのところまでくるんで利用しない手はない)。月1回(6月は忘れたが7月は17日)しか来ないので、通常2週間のところ約1ヶ月借りることができる(なので通常6冊のところ8冊まで)。ということは1ヶ月は次のが借りれない、ということでもある。
ふたつめは、朝日新聞紙上で筒井康隆氏が絶賛していた大江健三郎氏の「同時代ゲーム
同時代ゲーム (新潮文庫)

同時代ゲーム (新潮文庫)

を読んでいたからだ(読んでいたのは文庫版ではなくハードカバーのほう)。
これは面白くはあるんだが、独特の文体でなれるまで少々読みづらく、大部でもあり、けっきょく読みおえることができなかった。また借りて読もうと思っている。いったい最後どこに行きつくのか、まったく出口が見えない。そういう意味での安心感がまるでない本である。
さて、「震える山」だが、はじめはいまいち読む気が高まらなかった。というのも、いきなり自殺のシーンではじまるわけだが、自殺では犯人が分かっているぶん興味が半減するからである。なぜ自殺したのかその理由が知りたい、と主人公が思っても、彼とちがって俺はそいつに特別な思い入れがあるわけじゃないし。
ところが、そうは問屋が卸さなかったのである。自殺と言っても、なんか裏がありそうだし、そもそも、よくよく読みかえしてみると、はっきり「自殺」とは書いてない。
そして、家族の問題や、女性問題その他いろんな問題がからんでくる。そういうものが集まって、最後に…
猟区管理官ジョー・ピケットシリーズもそのうちネタ切れになるだろうと危惧していたが、なるほどこうきたか。という感じ。
読みおわってみると、今までのより厚みもでて、一本調子じゃなくって、なかなかのものだったのでした。