『肩をすくめるアトラス』アイン・ランド(著)脇坂あゆみ(訳)★★☆☆☆

肩をすくめるアトラス

肩をすくめるアトラス

リバタリアニズムというコンセプトは俺のうんと若いころからの考えに近いものがあるし、今だってそれにおおいに共感するところもある。だが、それで本当にやっていけるかどうか?それがわからない。この本はその思考実験なのかなって気もするが、あくまでも小説だし。
それでやっていけるのであれば、教義としてはとてもシンプルで美しい。だが社会は美しくならないかもしれない。人間はそこまで立派なものではないような気もする。社会は掠奪や殺人の横行するおぞましい無法地帯になってしまうのかもしれない。もちろん、うんとうんとむかしの社会の黎明期にはたいした福祉政策もなかったわけで、やっぱりそれじゃあまずいんじゃないかということで紆余曲折をへてこんな感じになってきたということは、やっぱりそれじゃあまずいのかもね。みんな欲ばりって前提で考えていかないと。
いや、それにしても、ぶ厚くて重くて大変だったよ。俺はどうも本を左手でささえて、右手でページをめくるらしく、左手の手首が痛くなっちゃったよ。ベッドに入ってあおむけで読むなんてのはもう苦行だわ。ぐわっと開くとページがとれてきそうだし、現に5mm分ぐらいとれてたぜ。なんで上下2巻にしないのかね。上巻でいやんなって下巻を買ってもらえんから?それとも、読んでるのをはたから見た人に{なんじゃこれ、このぶあっつい本は?}と思わせて、注意をひいてセールスをかせぐため?
はじめは漢字の使いかたとか、訳もおれの好み?って思ったんだけど、読んでいくうち、これはダメ訳じゃないか?って思うようになってきた、読点の位置がおかしいんじゃないかってところも何か所かあって。そのうち、いやいやこれは訳だけじゃなくて元の文も相当だぞ、って思えてきた。よくわからんところがいっぱい。
よくわからないと眠たくなるんだよね。〈眠くなる〉と〈よくわからない〉はどちらが原因でどちらが結果というのではなくて、一つのものだと思うよ。眠くなるとわからなくなるし、わからなくなると眠くなる。
そんな感じで、途中から全然すすまなくなって、けっきょく時間切れ。なので、★の色はうすくしときました。