『すべてはどのように終わるのか』クリス・インピー(著)小野木明恵(訳)★★★☆☆
- 作者: クリス・インピー,Chris Impey,小野木明恵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/01/21
- メディア: 単行本
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書評などで、おれの求めるものではないと思ったが、それでもおもしろそうだったし、ひょっとして、という期待もすこしあって借りてみた。どうせ特別読みたい本なんてないんだし。本は読みたいのにね。じゃないか。読みたいわけではないけど、本でも読まないと退屈しちゃうときがあるってだけだ。
案の定、おれの疑問に対する答えはなかった。答はコーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』(「ザ・ロード」(コーマック・マッカーシー/黒原敏行=訳)★★★★★ - 主夫の生活)の中にあるのかもしれない。やっぱりああなってしまうのだろうな。日本人はちょっとちがうかな?とも思っていたが、日本人にも悪い人はいっぱいいるわけだし、ああいう状況では、結局そういう人たちが生き残りやすいだろう。おれはこのまえ、外にでると誰かにつかまって食われてしまうので当面の食料は確保してあるから建物から出ないようにしようとしている夢を見た。
というわけで、「世界の終わりは見てみたい」けど、実際そういう状況になったらどうしよう、というかなんというか、ちょっと困ったことになっているのです。本当にそんなときがくるとは、ちょっと考えにくいけど、でもやっぱり可能性は排除できないわけで、恐いような楽しみのような、期待と不安の入りまじるまるで新入生の気分なのだ。
このまえの『「生き方」の値段』エドアルド・ポーター(著)月沢李歌子(訳)★★★☆☆ - 主夫の生活同様、著者が楽しんで書いているというふうで、それはそれでいいのだが、よくわからないこともときどきあった。それは本が終わりに近づくほど多くなっていき、最後は本当にただ読んでいるだけでまるで理解できていない、という感じだった。
誤訳と思われる箇所も少しあり、ひとつは外国人固有名詞のカタカナ表記が途中で変わってしまうというものだった。
137億光年というのは宇宙の大きさだと今まで思っていたけど、それは理論上の観測限界だね。「宇宙の地平線」。可知と不可知のさかいめ。
それにしても、今われわれがいるこの宇宙も、膨脹することによってやがてダークマターは拡散する。ダークマターは膨張をさまたげるので、ダークマターが希薄になれば膨脹は加速する。またダークマターが拡散すれば、真空が領域をひろげる。真空にはダークエネルギーがあり、ダークエネルギーは膨脹の推進力らしいので、膨脹はますます加速する。
そんなこんなで、小さな銀河の中心にある100万太陽質量のブラックホールも10^83年で消滅し、われわれの天の川銀河とアンドロメダ銀河の合体したミルコメダの中心に残っている10億太陽質量のブラックホールも10^98年で消滅する。10^100年より先には、陽子も崩壊し、ニュートリノや電子・陽電子、波長の長い光子しかのこらない。
そうやってやがて宇宙も、均一な、エントロピーのたかまりのかたまりになってしまうのだ。銀河も星もわれわれ生物も、宇宙のカルマン渦あるいはエネルギーのジャボチンスキー反応にすぎないのだ。