「グリーンワールド」 ドゥーガル・ディクソン(著)金原瑞人・ 大谷真弓(訳)★★★★★

ガイア・ピーターセン

グリーン・ワールド(上)

グリーン・ワールド(上)

グリーン・ワールド(下)

グリーン・ワールド(下)

上のAmazonの商品紹介では「グリーン・ワールド」と中黒が入っているが、実際の本では「グリーンワールド」である。表紙も背も標題紙も奧付も中黒は入っていない(当然だわな)。原題もGreenwoldと一語である。
すげえ本だったなあ。
はじめに、着陸直前の宇宙船内でながれるメッセージがある。下のほうには、横スクロールするインフォメーションバーのようなもの。次のページは、グリーンワールドの地図。まあ、これは、よくあるタイプかもね。
 
さて、読みはじめてすぐ、ほとんどの漢字にルビがあるのを知り、ひょっとして子ども用の本かといぶかった。こういう挿絵もあるし。

が、読みすすめていくうちに、どうも子ども用というわけではなさそうだと思えてきた。なら、どうしてこんなにルビだらけなのか?それは謎である。


そして、グリーンワールドの生物に関するレポートというか、論文ぽいペーパーが見開きで6枚配置してあるページ。これは読むべきかすっとばしてもいいのか。おおいに悩む。すこし読むと、内容的には、どうもちゃんとしたことが書いてあるようなのだ。が、ペーパーが重なったり、ページの端で切れて、一部が読めないレイアウトになっている。ので、こりゃちゃんと読ませる気はないな、と判断した。


つぎに、アルファベット順にならべたアルファベットの各文字に対応するグリーンワールドの生物をモチーフにした数え歌っぽい内容のページ。いちいち読むのがめんどくさいと思って、テキトーに読み飛ばしたが、あとから本文中で動物の名前が出てきたとき、何度かこのページのお世話になった。絵がきれいで、グリーンワールドの様子をイメージするのに役立っていると思う。



で、グリーンワールドの生物の図説ページ。当時・当地の著者(入植初期の人らしい)による「グリーンワールドの動物予備ハンドブック」からの抜粋ということになっている。これはまあ、ありえるな、とか、いやむしろ必要だろうな、と思えたが、それでもその詳細さは半端じゃない。図説っぽいページはひとまずこれでおしまい。あとは本文がつづく。
が、ときどき、また図版のページがある。当時・当地のポスターだとか、生物の図説(上述の図説と同様「グリーンワールドの動物予備ハンドブック」からの抜粋)とか、生物の捕まえ方や利用のしかた(「サバイバルガイド」からの抜粋か?)、などなど。そして、上巻の最後には12ページにわたる、当時・当地の科学者(と思われる人)たちによる、生物学的、地質学的な調査レポート。下巻の最後には、「クリーチャー図鑑 完全保存版」と題した生物図説のまとめ15ページ。


表紙を見ると、表面に牛乳が飛び散ってそのまま固まったようなところがあり、はじめは、図書館の人がプラスチックのフィルムでカバーするとき、空気を入れらかしたんか、とも思ったが、文字にかかった部分で色までかわってるところがあるので、こりゃわざとだな、と思ったのだった。そして、下巻に突入して、下巻にもそれがあるのを見て、俺の推論(「わざとだな」という)が正しいと確信した。というか、下巻のほうが激しくなってる。いまとなっては、その意味もわかる気がする。
上巻の表紙は緑。なるほどグリーンワールドだもんな。でも、下巻の表紙は朱。これも、たぶん、そういうことなんだろう。
価格は、上下巻ともに2400円。あわせて5000円弱か。でも、それだけの価値はあると思う。
はじめはすこし退屈だった。でも、下巻に入ってから、評価がかわった。上巻の退屈さは必要のある退屈さだったのだ。
これは、もともと、俺が、「あと1万年もすれば〜(例:世界も平和になるだろう)」みたいなことを言っていて、「あれ?ちょっと待てよ。1万年前といえばたしかに現生人類はもう登場していたと思うけど、1万年後はどうなんだ?今までと、いろんなことのスピードが違うからなあ。もう、俺たちみたいな生物じゃなくなっているんじゃないか。それとも死に絶えてるか…」ということで、現在の科学者たちの一般見解みたいなのを調べていたら、この本の著者のことを知り、かといって、代表的な著作である「アフターマン」や「マンアフターマン
アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界

アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界

マンアフターマン―未来の人類学

マンアフターマン―未来の人類学

は、物語じゃなさそうなので読む気になれないでいたところに、初の小説ということでこの本の存在を知ったのである。
そしてまた、人類はこの先、アイザック・アシモフの「銀河帝国シリーズ」のように宇宙にあまねく拡散していくのか、アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」のように地球で原始的な生活をおくるのか(それは成長型経済をつづけるのか、停滞型経済にシフトしていくのか、にもつながると思う)、それが俺の大きな悩みだったのだが(大問題 - 主夫の生活)、事前情報では、この本は、前者でいった場合どうなるのか?という思考実験的な小説のようだった。
それで、飛びついたのである。
飛びついてよかった。
それにしても、こんないい本が、すぐに手に入ったぜ。いま見ても予約数「0」だもんな。名古屋市立図書館での所蔵数も「1」。もっと宣伝してもいいんでないかい?ほんとに「1Q84」なんか読んでちゃだめだぜ。