「パイレーツ −掠奪海域−」マイクル・クライトン(著)酒井昭伸(訳)★★★★☆

借りてきて、すぐに読む気にはなれなかった。他に読んでいる本があったわけでもないのに。これでマイクル・クライトンの本は最後だという思いがあったせいかもしれない。それにたったの400ページそこそこなのだ。それで、1日おいて読み始めた。
読みだしてからも、何回も十分なインターバルをおいて読んだ。読みかけると、気づいたときにはずいぶんページがすすんでいるのだ。普通ならひと晩でイッキ読みのパターンである。
やはり読みやすい。ものすごく視覚的だし、「あ、これってなんだっけ?」と思ったときにはまさにそのタイミングで補足説明がなされる。だから、ページをくってまえ読んだところを検索するなんてことはまず必要ない。
マイクル・クライトンの本は、もともとあらすじっぽい(頭の中の独り言が少ない)と思うのだが(そこが好きなんだが)、今回のは余計にそんな気がした(一箇所だけ考え込んじゃうところがあったが、それは戦術をねるところで、それが「見せ場」なんでしょうがないだろう)。著者の死後、PCの中から発見された原稿ということで、そのせいもあるのかもしれない。物語は、たぶん完全に時系列で進み、場面もあっちへいったりこっちへいったりすることなく連続している。だからとてもわかりやすい。でも、単純といえば単純。もう少し氏の寿命が長ければ、それがあちこちで切られ順序を入れ替えられて、より複雑な構成になっていたかもしれない。ページ数が少ないのもそのへんの事情か?
これはその辺の事情とは関係ないと思うが、校正ミス(?)が多いのが気になった。
59ページ「…女房の同行に目を光らせておいたほうがいいな。…」は「女房の動向」だろう。
90ページ「かかった必要は?」「五百ダブルーンです、サー・ジェイムズ」は「かかった費用」だろう。
131ページ「…さあ、クレラットをどうかね?」とあるが「クラレット」だろう。おなじページの中にも「クラレット」が2回でてきている。
204ページ「索上め栓」とあり「ビレイピン」とルビがあるが、これは「索止め栓」。278ページにはちゃんと「索止め栓」と書かれている。
4つめをのぞきいずれもせりふ部分のため、登場人物が言いまちがえたのを上手に訳したとも考えられるが、それはまずないだろう。1つめは変換ミス、2つめと3つめは入力ミスだと思う。4つめは、昔ならありがちだけど、今どきなんで?って感じ。
あと、これでクライトンの本(日本で出てる日本語版)は全部読んでしまった、と思って奥付けをめくると、裏表紙裏に作品一覧(ハヤカワ文庫の)があり、「5人のカルテ」というのをまだ読んでないことに気がついた。あ、「大列車強盗」も読んでないや。な〜んだ。