「ザ・ロード」(コーマック・マッカーシー/黒原敏行=訳)★★★★★

ザ・ロード

ザ・ロード

すごい本だ。
いわゆる近未来SF。でも多分に文学的。核戦争か気候変動かなにかとてつもなく大きなことが起きたあとの荒廃した世界。空はいつも曇っていて、地面は灰だらけ。森はみんな燃えて炭化した幹だけが残っている。やたらと雨や雪が降る。季節のせいもあるかもしれないが、とにかく寒い。父親と少年はショッピングカートに荷物を積んで南をめざして歩く。
父と子以外にだれも出てこないのかと思ったら、悪いやつらがたびたび出てくる。彼らは人を殺して食っている。ひょっとすると赤ん坊を生ませてそれも食料にしているのかもしれない。そして、最後に、父は死に、少年は「善い者」にめぐりあう。
せりふ以外ではほとんど「、」(読点)が使われていない。またせりふには「「」」(かぎ括弧)が使われていない。そのため、一発ではよくわからなくて何度か読みかえさなければならないことがときどきあった。それは訳者の趣味か、原文がそうなのか。そしていったいどういう意図なのか。でも、なんとなくわかるような気がする。