「1Q84 BOOK 3 10月−12月」村上春樹(著)★★☆☆☆

1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 3

てなわけで、「鹿男あをによし」「新世界より」「ピストルズ」と、ファンタジーがつづいてしまったのであった、俺のきらいなファンタジーが。
が、やっぱり、俺は、もうこれ以上、この人の本を読むことはないと思う。後半、「なるほど、うまいこと言うな」という比喩もあった(この「うまいこと言うな」というのは、昨年からわが家でのはやり言葉。出典はNHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」での茂の父のせりふ。つっこまれたり、しかられたときはこれにかぎる)。でも、そういうのは全体の半分以下で、大半はイメージのわかない、あるいは意味のわからない、むしろ混乱をまねく、つまり余計な比喩だと思う。
そして、こっちのほうがもっと重要なことかもしれないが(比喩の話は今までにもずいぶん書いてるし)、謎が謎のままでほったらかしにされている(ネタバレになるかもしれないのでホワイトアウトしておきます。以下同様)。そういうのもありかな?とは思うが、万城目学貴志祐介阿部和重はもっときちんと整合性のある世界を構築していて、俺はそこに感服するのである。うーん、たしかに余韻には欠けるか…
だけど!そんな、穴ぼこだらけの、スカスカの世界なら、たいして頭つかわなくても書けるじゃないか。え?ああ、そうか、そういうほうに頭を使わずに、表現のほうに使ってるのか。リソースは有限だからな。
でも、けっして、プロットが単純とは言ってないよ。じゅうぶん複雑で、そこは俺もおもしろいと感じたんだけど、そしてだからこそBOOK 2 − BOOK 3 と読みつづけることになったんだけど、複雑ゆえに謎が謎のままでほったらかしになっちゃってるって感じなんだよね。


それとも、まだまだこの調子でBOOK 4 以降が出てくるのだろうか。そりゃ出版社には(本人にも)オイシイ話だな。整合性はさして吟味しない、謎は謎のまま、比喩でページ数をかせぐ。そして売れる。出せば出すだけ売れる。おお、すばらしい。ともあれ、それなら、謎が謎のままでほったらかしにされていても、今の段階では、いいということになる。というか「ても、いい」ではなく、「でなくてはならない」だな。でも、俺はもう読まない。これじゃまるで川口浩探検隊だもん。
ただし、価値は認めるよ。文学における価値。それから出版業界における価値。でも、俺はきらい。まるで、まだ日本がバブル経済に踊らされる以前の1980年代初期に日産から発売されたパルサー・エクサ キャノピーのように。