「巨船べラス・レトラス」筒井康隆(著)★★★★★

巨船ベラス・レトラス

巨船ベラス・レトラス

すげえ本だわ。あいかわらずやってくれますわ、と思ったら、2005年から2006年にかけて連載されて2007年に出た本か。「ダンシング・ヴァニティ」よりちょっと古いんだな。
いやあ、作中の小説家の本のなかの登場人物が作中に登場し、作中の小説家の作者たる筒井康隆も作中に登場してメタフィクションだなんだかんだと言ってしまうメタフィクションなのだ。
論じる対象こそ文学ではあるが、アーダコーダと議論をするところは「宇宙衛生博覧会」にも通ずるところがあると思った。好きだなあ、こういうの。
俺も、A氏との議論をへて、つぎのような暫定的結論を得た。将来的には…

違法コピーはいくら頑張ってもふせぎようがなく、そのせいで、著作権を主張する著作物/マスプロ芸術家は激減する。文学も音楽もライブが主になる。
この本の中には、次のように書かれていた。

学術的分野においても論じられるのは一般大衆、これは無論読書大衆ではない一般大衆の書いた作品の価値についてでありましょうし、大学の文学部においてはむしろミームの賦活を促す古典の研究が主流を占め、(以下略)

一般大衆の書いた作品も、古典も、著作権とは無関係だもんね。
こういった状況は、文学や音楽が死ぬ、ということを意味しない。ただ、商業主義と決別するだけである。つまり、本来のかたちにもどるだけであり、より純粋になるだけである。