空白の3日間

耳に包帯をした自画像

経過

日曜日の午後2時ごろ、図書館に出かける上の子に、「父ちゃんは耳の下のリンパ節がすこし痛い」といったことを覚えている。
そのあと小便をしようと便器に腰を下ろし(わが家では独身時代の一人暮らしのときから男も座ってすることにしている。掃除簡略化のため)、ももに手のひらを置いたら、やたらと熱い。これはまずい、と熱をはかると、まだ37度2分だった。が、とりたててすることもないので大事をとってベッドで横になる。
寒気がして、熱は徐々に上がっていき、たぶんピーク(39度5分ほどだったと思う)は午後8時ごろ。というのも、それ以降は寒気もなくなったからだ。そこで、今度は熱を下げようとカロナールを飲む。念のため(胃の保護のため)ガスロンNも飲んでおく。
その後、逆に暑くなり、しめしめこれで熱も下がっていくぞ、と思っていた。夜中ごろ、ずいぶん楽になったと思ってはかってみると、たしかに下がってはいたが、たいしたことはない。38度7分だった。
そして、耳の下のリンパ節あたりがバンバンに腫れて痛くてたまらない。そこで、鎮痛・消炎剤(オステラック200mg)を追加で投与。
なんとなく痛みは軽くなったような気がしつつ悶々と眠っているのかいないのかわからないような夜が明けて、熱をはかってみると、またもや39度3分ぐらいまでもどっていた。
もう、睡眠療法なんて悠長なことは言ってられないと判断し、医者へ。
問診表に発熱と耳の下の腫れと書いたのでおたふく風邪を疑われたが、診察の際、耳の外傷のことを説明すると(って見ればわかるが、経過など)、じゃあそれに違いない、ということで抗生剤の点滴となる。
経口薬はクラビット(なんと500mg!まえ飲んだフロモックス錠100mgやホスミシン錠250mgなんて屁みたいなもんだぜ)。1日1錠でいい。それが3日分、つまり3錠で750円=1錠250円。でもこれは保険適用後の値段なんで、本当は1錠800円以上するのだ。
だが、M医院も、なかなか良心的というかよくわかってると思ったね。解熱・鎮痛剤や抗炎症剤は処方しなかったから。
だから、熱も痛みも腫れもなかなかひかなかったよ。
熱が下がりだしたのが、月曜の夜中ぐらいから。火曜の朝はもう36度台になってた。
つばを飲み込むときに口の耳のあいだが痛むのは、口を右にひょっとこのようにしてやるとそれほどでもないというのを発見し、ものを噛むときの痛みは逆に左のほうで噛むといいことも発見した。きのうのうちに、つばを飲み込むときの痛みはなくなったが、なにもしないときの痛みは続いていた。それも、今朝にはなくなり、ただ、口を大きく開けるときの痛みはまだ残っていた。今(午後2時半ぐらい)では、それもほぼなくなり、痛みに関してはだいたい終了。
腫れのほうもだいぶひいたけど、まだすこし残っている。

原因

汚染された手(つまり普通の手)で傷口を触ったこと。で、なんで触るかというと、かゆいから、というのが一番の理由。で、なんで触れちゃったかというと、なにもカバーリング(ラップなりガーゼなり)をしてなかったから。じゃあなんでしてなかったかというと、それは、ひとつには、見えにくく手の届きにくいところであるため面倒だったから。また、カバーリングの必要性を認識していなかった(むしろ放置療法を信じていた。簡単に言えば「まあそのうちなおるだろう」という楽観主義?)からというのもある。が、これで改革開放政策のまちがいがはっきりしたわけだ。それに、もちろん、外見を気にしてというのもある。目立つところだし、耳をそぎ落としたあとのゴッホみたいだからね。まあ、とどのつまりはそうなっちゃったんだけど。

わかったこと

その0

上述のごとく、傷口には何らかのカバーリングが必要であること。また処置のさいは手指や器具をじゅうぶん清浄な状態にしておくこと。

その1

痒いときに掻くのは、〔人によってちがうかもしれないが、少なくともおれにとっては〕無条件反射だ。目のまえに何かがきたら目をつぶるようなもんで、それは避けられない。それは、今回、掻いてはいけないと強く意識することを強いられて、初めてわかったことなのだが、気づいたときにはもう掻いている(というか触っている)のだ。だが、それは掻くという動作の初動であって、それ以降は意識的な行為である。掻いたな(触ったな)ということが意識された時点で、もうその動作を終了させればいいのだ。それ以降その動作を続けるか、あるいはそれ以上その行為を激化するかは、まったくもって意志の問題であり、嗜好の問題なのだ。
おれは、いままで、痒みがあると、それを掻いて、掻いて掻いて掻きまくって、それがやがて痛みに変わるまで掻いていたのだ。じつにばかげている。それじゃあ感染してくれといってるみたいなもんだ。深く反省しております。

その2

口や鼻や目など外部と接する前提の部分にはそれなりの防御機構があるけど、表皮をうしなった皮膚にそんなものは存在しない(に等しい)ということ。

その3

傷口からの感染でこんなふうになってしまうことがあるということ。
いままで、虫に刺されて刺されたあたりからリンパ節まで(つまり足首から鼠蹊部まで)がバンバンに腫れたことはあった。腫れてるところは当然熱をもっていたが、体温そのものはどおってことなかった。
だが、むかしは、こういうことはよくあったのではないか。抗生物質がなければ、今回のケースも自身の抵抗力にまかせるしかない。リンパ節で繰り広げられる原因菌とのバトルに負ければ、やつらは体のもっと奥深くまで侵略していくだろう(今回はリンパ節どまりではなく唾液腺(耳下腺)までいってたらしい)。やがて・・・血液に入り込めばやつらの思う壺で、つまり敗血症だよね、血流にのって全身を駆け巡りいたるところで増殖して、多臓器不全で死にいたる。
今回、「このまま死ぬかもしれない」とは思わなかったが、「これが直接死につながっている」ということは感じた。死につながる道。でも途中で何本も枝分かれしている。いずれはどれも同じところへいくんだろうが、今回は枝道にそれて、すこし遠回り、という感じだな。

そして、なぜ神だの霊だの前世や死後の世界だのを信じる人が多いのか


なにか理由のわからないことがあると、理由をさがす。理由が見当たらなければ見えないものに理由があると思う。いくつかの〈証拠〉から、想像力によって、その理由にたいし形が大きさが性質が与えられる。ちょうど右の図形の中に白い三角形が見えるように。
そうやって、神や悪魔や妖精や天使や霊や魂や前世や天国や地獄や細菌やウィルスや分子や原子や素粒子なんかが見出されてきたのだ(と思う)。
今回のような場合、大昔だったら、きっと、悪魔が入り込んだとかそういうことになっていただろう。
いまだに神や悪魔や妖精や天使や霊や魂や前世や天国や地獄みたいなことを信じている人は、それを想定しなくても説明のつくような〈証拠〉を持っていないんだ、きっと。


いやあ、それにしても、それだけのことを知るのに、ずいぶん高い授業料だったな。いままでで6100円。まだもうすこしいかなきゃなんないだよね。ひごろ10円20円ケチって買い物してる意味ねぇや。まあ、そのぶんでこのぶん、プラマイ0ということで、バランスとれていいとすっか。
それに、天災や人災や交通事故や犯罪とちがって、自分がまねいたこと、しかも、掻き壊しが元だっていうのがねえ、なんともはや情けないですわ。