失われた宇宙の旅 2001 (アーサー・C.クラーク)★★★★★

映画製作の裏話と、その過程で没になった原稿の拾遺集。まあ、裏話はどうでもいいようなもんだが、訳者あとがきにもあるとおり、フィクションの部分(つまり没原稿)が約8割をしめており、そちらが面白い。とくに、スターゲート以降がすごい。映画や原作本には出てこない異星人のようすや彼らの住む惑星の景観がこまかく描かれていて、それが78ページにわたっている。どうやってこんなことを考えつくのかというような描写がこれでもかこれでもかと続き、この部分だけでもこの本の価値は十分あると思う。
映画や原作本最終稿では、将来それらの記述が科学技術の進歩により陳腐化することを恐れ、あえて具体性を排除したようだが、この本の発行は2000年。2001年まであと1年たらずとなり、もはや現実に追いつかれることはないだろうと発表に踏みきった。と思いきや、原書のほうは1972年発行である。ちょっとばかしはやまったか。最後の1文を、氏の信念的未来予測で締めくくっているのだが、それがまったくの大はずれなのだ。