A氏が来て、シーリングファンの羽根を曲げる

まさか天井扇があんな非力だとは思っていなかった。それが、この家に住んでみてわかった最大の誤算である。
俺は、天井扇といえばカルカッタバンコクの安宿でブンブン回ってたああゆうやつだと思いこんでいた。ホテルパラゴンのやつなんか天井から鎖でつり下げるタイプだったので、回り始めるときトルク反力でモータ部が逆回転していたぜ。
ところが、俺んちのときたひにゃあ、窓をから入ってくる風のほうがうんと強い。つまり、窓を閉めてエアコンをつけているときなんかは有効だが、風だけで凌ごうというときにはまったく無力なのだ。
より強力なやつにかえようかと思ったこともあるが、取り付け部の問題、コントローラの問題、消費電力の問題、いま使っているやつがもったいないという問題などを考えて、とりあえず様子を見ていたのだ。
羽根の曲げかたを大きくするというのは、すぐに考えた。でも、空気抵抗が増してモータの負荷が大きくなること、そもそも天井扇が手の届かないところにあることがひっかかって実行に移せないでいた。
しかし、もう堪忍袋の緒が切れた。モータが過不可に耐えきれず焼き切れるならそれもよし、それなら買い替えの最大のキューになろう。そして、A氏が来るというので、ついでに梯子をもってきてもらえば、手の届かないところにある問題もなんとかなると思ったのだ。
ところがどっこい、もってきてもらった梯子は短くて役には立たなかった。結局、吹き抜けに面した2階の手すりに2×4の角材をさしわたし、決死の覚悟でその上にのって羽根をはずした。
はじめ最大45°ぐらいに曲げ、取り付けて試運転してみると、だめだ。回転が上がらない。空気抵抗の影響はかくも大きかったのか。ちなみに、この取り付け時には、シーツをつないだものをロフトの手すりに通し、それを体に結びつけた。羽根を曲げるのに、かなり体力を使い、さすがに怖くなったからである。
てなわけで、ふたたび羽根を取り外し、最大30°ぐらいまで曲げもどした。こんどは、なんとか、今までぐらいの回転数がでているようだ。
しかしなんだなあ、要するに、羽根の形状によってたくさん空気を送れるようにするとモータの回転が少なくなり、モータの回転を上げるためには空気をたくさん送れないような羽根の形状にしなければならない、つまり、どうやってもゲインはおんなじ、ということか。なんだかんだいって、とどのつまりはモータの性能、ひいては消費電力で決まり、消費電力が小さい、つまり非力なモータでは、これが(あれも)限界っちゅうわけだ。