『くちぬい』坂東眞砂子(著)★★★★☆

くちぬい

くちぬい

妻が借りた本。
妻がこの本を読んでいるとき、うしろからなにげなく肩をさわったら、とびあがって驚いていた。こわがっていた。
そして、ほんの2〜3日で読了していた。
なので、おれも読んでみようと思った。
たしかにおもしろい。なにやら不穏な雰囲気がある。こういうのを文章がうまいというのか、読みやすい。ただし、視覚情報のテキスト化はそれほどうまいとは思えない。説明や形容をされても、うまくヴィジュアライズできないことが多かった。部落の地理的構造というか、道がどのように通っているのかが、最後まで明確にはわからなかった。著者の経歴を見ると、建築やインテリアデザインをやっていたらしいが、いくらかの齟齬を感じた。いやむしろ、ヴィジュアルはヴィジュアルで表現することがスタンダード(そのほうが正確でもある)な世界にいたため、言語化はむしろ苦手なのかもしれない。しかし、もうすこし言葉をつくしてもいいと思う。大部にはなってしまうだろうが、読者は読むことを楽しんでいるのだから読むべき言葉がおおくなるのはむしろうれしいのだ。それに、曖昧にではなくクッキリと視覚化できたほうが作品に入り込みやすいことは言うまでもない。
あんまり詳しいことは書けないが、この終わりかたは好きだ。
きのうの午後読みはじめて、きょうの昼までには読みおえてしまった。309ページ。この雰囲気なら、もっと描写をこまかくしたりエピソードをふやしたりして上下2冊計800ページでもよかったと思う。