坂本龍一との共演もしくは競演

自分の夢を親が無理やり子どもに押し付ける、というのはスポーツの世界ではよくあることだ。わが家の場合は無理やりではない。挫折した俺の意志を下の子が快く受け継いで、あの「戦場のメリークリスマス」を練習してくれている。
最近ようやく最後まで弾けるようになり、「いちどいっしょにやってみたい」と言うので、CDをかける。リピート設定にして何度もかける。ついていけるところもあるが、おおかたグズグズである。そりゃ無理もない。まだ小6で、練習を始めて約半年、ピアノを始めてからもまだ4年に満たない。
下の子は、坂本氏の演奏を聞いて「すごいすごい」としきりに感動している。たしかにすごい。アクセントがすごい。ピアノの弦がびんびん鳴っている。右手の小指もめちゃ強力。テンポの遅速ではなく、とにかくアクセントで表現している。
さすがにあっちは音もいい。ただ、これは再生装置の(あるいは録音の)せいもあるかもしれないが、ダイナミックレンジはこっちの勝ちだ。小さい音で大きさがおなじくらいになるようにボリュームを合わせると(そのためにはいつもよりかなりボリュームを上げなければならない)、大きい音はこっちのほうが大きい。坂本氏のピアノはびんびん言うほど激しく鳴っているのに、音の大きさはやっぱり生に負けていたのだった。