なぜ水平につりあうのか?
端的にいって、それは、さおが物だからである。もう少し噛み砕いていうと、物には大きさと重さがあるということだ。ここでは、大きさと重さを分けて考えていきたい。
まずは大きさ
ここでは大きさのみを考えることにして、重さについては考えない。重さについてはまたあとで。
大きさがあるということは、長さだけでなく高さ(厚み?幅?)もあるということだ。下の図を見てほしい。
長さだけでなく高さh(厚み?幅?)のせいで、さおは、実際には一直線ではなく、やじろべえのような形と考えられる(仮想さお、図の緑線)。すると、左右それぞれの仮想さおにかかる力の垂直分力は、常に上がっているほうが大きくなる。すなわち、常に上がっているほうのさおにはたらくモーメントのほうが大きくなり、さおが水平に保たれようとするのである。
これをもう少し数学的に説明する。
0 < φ <
π/2 , 0 < θ <
π/2
なので、常に
であるが、|φ-θ|は正の場合と0の場合と負の場合がある。
正の場合とは、上がっているほうの仮想さおが水平よりも下の場合、
0の場合とは、上がっているほうの仮想さおが水平の場合、
負の場合とは、上がっているほうの仮想さおが水平よりも上の場合(図の場合)。
で、まず、|φ-θ|が正の場合。
= (φ+θ) - (φ-θ)
= 2θ > 0 ∵ 0 < θ <
π/2
∴ |φ+θ| > |φ-θ|
次に、|φ-θ|が0の場合。
= (φ+θ) - (φ-θ)
= φ+θ > 0 ∵ 0 < φ <
π/2 , 0 < θ <
π/2
∴ |φ+θ| > |φ-θ|
そして、|φ-θ|が負の場合。
= (φ+θ) - {-(φ-θ)}
= 2φ > 0 ∵ 0 < φ <
π/2
∴ |φ+θ| > |φ-θ|
ということで、どんな場合でも、
となる。
したがって、
0 < |φ+θ| <
π/2 すなわち、仮想さおが水平から垂直までの範囲では、いつも、
cos(φ+θ) < cos(φ-θ)
∴ F1*cos(φ+θ) < F2*cos(φ-θ)
Q.E.D.
重さのはたらき
大きさがあれば、重さがある。上の図の上からきている糸の下あたりを見てほしい。その灰色の三角形の分だけ、上がっているほうが重くなり、下がっているほうが軽くなる。これは上がっているほうを下げるはたらきにつながる。
つりあわないとき斜めになるのはなぜか?
水平につりあうときに見てきたように、上がったほうのさおにはより大きなモーメントがはたらこうとするが、それに見合ったぶんおもりが軽ければ、その角度で釣り合いがとれて止まる。これは説明のための説明で、実際には次のようになる。
左右のモーメントの大きさが異なるとき、小さいほうのさおが上がる。上がると、仮想さおに対する垂直分力F*cos(φ-θ)は大きくなり、また、さおの重さも図の灰色の三角のぶん重くなる。すると、モーメントがさっきより大きくなってつり合いがとれる。見出しに[つりあわないとき]と書いたが、じつは、つり合っているのである。
ついでに
ここでは上から吊り下げるときを考えたが(モビールから発した疑問なので)、下から支えるときはどうだろう?
重さを考えない大きさだけの作用(つまり、上がったほうの垂直分力が大きくなる)は吊り下げるときと同じだが、
重さだけを考えると、下がったほうの重さのほうが重くなって、傾きはどんどん加速し、すぐにひっくり返ってしまうことになる。
というわけで、やじろべえはああいう形でないと具合がわるい。モビールにしてもああいう形のほうが安定して(たとえ傾いてもあんまりわからないし)いいと思う。こんどは、それでもって、音の出るやつをつくろうと考えている。