「海・呼吸・古代形象」を読み終える

とてもたくさんのことを学んだ。最後のロダンの「考える人」と広隆寺の「弥勒菩薩像」の比較もいい。
まえに「あちこちに書き散らかしたものの寄せ集め」と書いたが、講演録もすでにどこかの雑誌や会報で文字になっているもののようなので、そのような表現をとった。
まあ、そんなわけで本としての全体の構造が1本ではないため、目次を見ても論理的な筋道がわかりにくい。だから、巻末の吉本隆明氏の解説が効果的である。氏はその中で著者三木成夫の考え方を、

この方法を仮に初期論的な方法といっておけば、これは初期という枠組みを仮定して、その内部の構造と、展開の方向と、反復の仕方の組み合わせとして、事象が膨らんでいく過程を位置づけることだ。

と、表現している。これはまさにフラクタルな事象を記述する方法そのものではないか。これらが書かれたのが、おもに昭和40年代〜50年代ということを考えると、すごいことのような気がする。
氏にならい、印象に残ったことを俺なりに解釈して俺なりにまとめてみると、

  1. 動物の腸管(消化管)を裏返しにした構造が植物の構造である。動物はすでに胚の段階から内側へ分裂しつつ伸びていく。それに対し植物は外に付け足すようにして伸びていく。
  2. 植物は太陽を心臓とし天空と大地をふくめた循環器系を持っている。
  3. 植物は天体の動き等"遠"を観得し、動物は"近"を感覚/運動する(感覚と運動は切り離すことができない)。
  4. しかし動物にも植物的な部分がある。それが内臓系である。例:24.8時間の睡眠周期や月経周期。
  5. 心とは内臓の声である。だから感覚器官でとらえることのできないことを観得することができる。だから言葉にすることが難しい。例:腹がふくれるとシアワセになる。ウンコをすれば気分爽快。不眠/睡眠不足と鬱の関係。

これも一家に一冊おいておいてもいい本である。