「10万年の世界経済史」グレゴリー・クラーク(著)久保恵美子(訳)★★☆☆☆

10万年の世界経済史 上

10万年の世界経済史 上

10万年の世界経済史 下

10万年の世界経済史 下

経済学の「け」の字もわかっていない俺ならばこそ、新しい知見もあれど、経済学の「け」の字と「い」の字程度でもわかっている人だったら、どうなんだろう。
産業革命以前の経済がどんなんで、産業革命がどうして起きたか、とくになぜあの場所で、なぜあの時期に起きたか、そして、いちばんの問題は,産業革命以降なぜ所得の地域差が拡大したか?というお話。
たくさんの資料で詳しく書かれてる。だいたいわかったけどこまかいところでわからんところは多々あり。それは俺の問題だけど、上記の問題の最後のについては著者も[わからん]という結論のようだ。というか、それは著者の結論というよりも、経済学の現状らしい。なんか最近の調査では、人は年収650万円をこえたあたりから幸福感が増加しなくなる、なんて言われてるようだが(http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100907_money_buys_happiness/)。
この本では一人あたりの所得しか問題になっていない(特に1800年以前のマルサス的経済の社会において)が、人口が減って所得が増えて、それで生活水準が上がったと言えるのか。人口が減る、あるいは人口が増えないということは、それなりにおおぜい死ぬことであり、自分が死ぬのもいやだし、子どもが死ぬのはとても悲しい。それはたぶん学習で獲得した感情ではなく、生得的なものだろう。いくら所得が減っても、死なないということのほうが幸福なんじゃないか。だから、格差がひろがっても人口がふえるのは[いいこと]だと俺は思うのだ。
著者の言うように、移民の自由化は、国際的な所得格差に対する先進国のできるもっとも確実な支援策だと思う。それでいろいろヘンなものも持ちこまれるだろうし軋轢もあるだろうが、だからといって抑制するんじゃなくて、それを前提にその対応策をこうじながら自由化していくべきだと思う。