『昨日までの世界』ジャレド・ダイアモンド(著)倉骨彰(訳)★★★☆☆

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

まず、しょっぱなから、具体的には3ページの[日本語版への序文]からだ。〈疎密〉という訳語が使われていた。どうやら〈稠密〉の対義語として使われているようだが、おれはそういう使いかたを知らない。
なので辞書で調べてみた。と言ってもオンライン辞書だが。

そ‐みつ【疎密/粗密】
まばらなことと細かいこと。粗雑であることと精密であること。「人口分布に―がある」

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/131409/m0u/

そ‐みつ 【疎密/粗密】
まばらなことと細かいこと。粗雑であることと精密であること。「人口分布に―がある」

http://kotobank.jp/word/%E7%96%8E%E5%AF%86

なんだまったくおんなじじゃん。ああ、どちらも出典は「デジタル大辞泉」だ。
ほかのはないか。

そみつ 【疎密/粗密】
密度のあらいことと細かいこと。
「人口の―」

http://www.weblio.jp/content/%E7%96%8E%E5%AF%86

これは『三省堂 大辞林
英語でもこうなる

粗密
読み方:そみつ
疎密 とも書く
文法情報 (名詞)
対訳 coarseness and fineness; sparse or dense (growth)

http://ejje.weblio.jp/content/%E7%96%8E%E5%AF%86

もうやめとこう。どれも似たようなもんだ。


だったらAmazonのカスタマーレビューでそこに言及したものはないか?と検索してみると、
検索結果はゼロ。
だれも違和感を感じてないのか?

読んでも読んでも出てくる。おれはそれが気になってないように集中できなかった*1。上巻のまんなかへんからあんまり出てこなくなってモヤモヤがうすくなっていたのだが、最後のほうでもまた出てきた。エピローグでも出てきちゃったよ。
じゃあ〈稠密〉の対義語は何なんだ?と思って調べてみるが、うまい言葉が見当たらない。〈希薄〉という語をあげているところもあったが、〈希薄〉の反対は〈濃密〉になるだろう。〈密〉なら〈疎〉でいい。〈稠〉が邪魔なのだ。じゃあ〈稠〉の意味は何かというと、

ちゅう【×稠】
[音]チュウ(チウ)(漢)
びっしり集まる。「稠人・稠密」

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/142958/m0u/

じゃあ、その対義語は?というと……うーんわからない。
だったら、そもそも〈稠密〉なんて言葉をつかわず〈密〉と言っとけばいいのだ。

さて、かんじんの内容のほうだが。
伝統的社会の人々は〈おしゃべり〉というのがおもしろかった。そりゃそうだろう、映画もない。ラジオもTVもない。文字もないので本もないし、娯楽といったらおしゃべりしかないわな。娯楽であると同時に、危険箇所を教えあったりという情報交換や、教育の場にもなっている。いいねえ。
ただし、一人のときにすることがない。でも、一人になることはめったにないようだけど。

宗教については[空白の3日間 - 主夫の生活]の最後のほうに書いているが、おれはその程度の理解で満足していたので、とりたてて得るところなし。

病気についても、[『迷惑な進化』 シャロンモアレムSharon Moalem, ジョナサンプリンス Jonathan Prince(著)矢野真千子(訳)★★★★★ - 主夫の生活]でわかったこととだいぶ重なっていたので、とりたてて得るところはなかった。


まあ、とにかく、これも冗長というか冗漫というか、[『「生き方」の値段』エドアルド・ポーター(著)月沢李歌子(訳)★★★☆☆ - 主夫の生活]で書いたように、“こういう大衆向け学術書(?)の翻訳本にはよくあるような気がするのだが、PCに向かった著者が短時間にウワーッと書きまくった、って感じ”なんだよね。もっと整理したらいまの3/4ぐらいの量にできるんじゃないかなあ。
時間かかりました。

*1:こういうことはかつて〈青の炎〉という映画をみたときにもあったのだが、そのとき気になった《謎》はついこのまえ解決したのだった。その件についてはまた後ほど