『女の由来 もう一つの人類進化論』エレイン・モーガン(著)望月弘子(訳)★★★★☆

女の由来―もう1つの人類進化論

女の由来―もう1つの人類進化論

  • どうして2足歩行をするようになったのか?
  • どうして道具を使うようになったのか?
  • どうして体毛が少ない(本数にはたいしたちがいはないようなので正確には細くて短い)のか?
  • それなのにどうして髪の毛は太くて長いのか?
  • どうして皮下脂肪層があついのか?
  • どうして乳房が発達したのか?
  • どうして鼻孔が下をむいているのか?
  • どうして泣くとき泣き顔になるのか?
  • どうして涙をながすのか?
  • どうして尻の肉づきがいいのか?
  • どうして発情期らしい発情期がなくなったのか?
  • どうして交尾にややこしい手続きがいるようになったのか?
  • どうして向かいあわせで交尾をするのか?
  • どうして女以外の人や物や事に欲情する男がいるのか?
  • どうして言葉をしゃべるようになったのか?
  • どうして象の鼻は長いのか?
  • どうしてクモやヘビを特別に嫌悪する人が多いのか?

というようなことに興味のある人は、いちど読んでみるべきだろう。これらの疑問が、アクア説(人類の祖先の化石が発見されない鮮新世の数百万年間、彼らは海辺(水辺)で生活していたという説)によって、ことごとくときあかされる。すっきり腑に落ちる。
ついでに、アクア説には直接関係ないけど、

  • どうして女は尻をふって歩くのか?

についても書いてある。ほんのひとこと書いてあるだけだけど、俺としては大きな収穫だった。
 
あとがきで著者本人も書いていたように、(〈ニューヨーカー〉誌が、「ぺちゃくちゃしたお喋り」と評した)本書の文体が冗漫に感じるきらいはあった。だが、そこは大目に見よう。ただ、

人は海辺で進化した―人類進化の新理論

人は海辺で進化した―人類進化の新理論

では、そういう文体にならないよう気を配ったとのことなので、このての本がはじめてで、「ぺちゃくちゃしたお喋り」的な文体にアレルギーのある人は、はじめっからそっちを読んだほうがいいかもしれない。おれはもうこれを読んでしまったので、またそれを読むかどうかはわからない。
前半はアクア説に直接関係のある話でおもしろかったが、後半は海辺(水辺)での生活からより内陸での生活にもどってからの話になり、イマイチだった。それに、やはり、あとがきで本人も書いていたが、特にその後半、『女の由来』(The Descent of Woman)というタイトルがしめすように“女性解放という視点から”書かれていると強く感じられた。それらを総合して、マイナスひとつである。
どうも1972年に書かれたものを1985年に改訂した本のようで、やはり{古いな}と思わせる記述もおおい。それでも、{ようやく日本もこのレベルに追いついてきたか}と思うこともいくつかあった。それとも、欧米ではいまでもなんだかんだ言ってmasculineというかmachismoが文化の根底にあるのかもしれない。