馬鹿の見本

年寄りの気持ちがよくわかる。たしかに便所に手すりは必要かも。それにつかまってそおっと腰を下ろさないとまともに小便すらできない(我が家は男もすわりション)。
腰痛である。ただし、ぎっくり腰ではない。外傷である。しかも自損事故である。事故といっても交通事故ではない。家庭内事故である。
俺はいつものように階段上部の2階の床にぶら下がっていた。ほら、階段の上には上の階の床がないでしょ?あったら上るとき頭ぶつけちゃうし、そもそも上の階へいけないから階段の意味がない。で、2階の床は階段を上がりきったところで階段と接し、階段の側面をまっすぐ上に見上げたところと階段の最下部をまっすぐ上に見上げたところにその端面がある。俺は、ときどき、体を伸ばすために、猿本来の行動として、階段最下部の上にある2階の床にぶら下がるのである。で、きょうもぶら下がっていた。
すると、下の子が自分もやるという。ぶら下がったはいいが、いったんぶら下がるともう足が階段に届かない。2階の床の端面を垂直に下ろしたところよりいくぶん高い段に立ってつかまるからね。ぶら下がっちゃうと体が前に振れて、足下の階段はもっと低い段になっちゃうわけ。飛び降りようにも下は階段で足場が悪いからまともに平面に着地できる気がしない。というわけで大いにあせり、力尽きて2階の床から手が離れるか離れないかというときに、俺が抱えて下ろした。
それで、俺は考えた。ちょっと体を振れば、階段を下りきったところ、つまり1階の床に着地できるんじゃないか、と。
で、やってみたんだ。そうしたら、2階の床の端面に額をぶつけて、体が後傾した状態で床に着地、階段の最下段の角にぶつけたらしく、腰に激痛が走る。頭も痛いし腰も痛い。でも頭の痛みなんて問題じゃない。腰の痛みは今までに経験したことのない痛みで、カッキーンという種類のもの。直後は立ち上げれたけど、あまりの痛みに床に転げなおしたぜ。
幸いあたったのは体の中央部ではなく25%ほど左にずれたところ。つまり、骨ではなく肉のところ。だから骨の損傷はないと思うし、ましてや中枢神経系が・・・ということはないと思う。
しばらくして少し痛みがやわらいだので、夕食の準備にとりかかったのだが、いかん、腰をかがめたり、しゃがんだり、捻ったりすることができない。だからお料理もサバイバルである。立っているだけならまだいいのだが、ある種の動作で、すぐにまたあのカッキーンという痛みが炸裂する。痛みのせいで消化器系がおろそかになっちゃうのか、吐き気がしてくる。俺は、食べたらもどしそうなんで、子どもの分と妻のおにぎりだけそーっとつくる(毎週金曜の夜はたいていバスケットボールの練習で、妻は仕事から帰ってくるとすぐにとんぼ返りで練習に行くので、クルマの中で食えるようにおにぎりをつくっておくのだ)。
どの種類の動作をどのくらいの量(つまり曲げ角度)やるとあのカッキーンが来るのかわからないので、どんな動作もゆっくり慎重に少しずつやらねばならない。でも、たいてい痛みは唐突にやってくるので、動いているかぎり痛みで吐きそうになってくる。だから寝た。
寝るときがまた一苦労だが、起き上がるときにくらべればたいしたことない。いちど寝たらもう起きたくないという感じ。でも、寝ているときは、普通の打撲程度の痛みはあるものの、あのカッキーンはない。で、本を読んだ。そうしたら、本の中でも主人公が腰痛になった。なんというシンクロニシティ
で、2時間ぐらい横になって、おしっこに起きたついでにこれを書いているという次第。少しは快方に向かっているみたいなんで、とりあえず安心しているところ。